2年生コース「左官」の現場

2011年10月、家づくり学校:2年の生徒達と、東京中野区にある左官のメッカと言われる「富沢建材」を訪ねた。ここにはあらゆる種類の左官材料が揃えてあり、全国のカリスマ職人と呼ばれる人達が集まってくる。
富沢建材の冨澤英一さん、跡形を残さず忍びのように見事な仕事をする「忍者左官」こと小沼充さん、伝統的な枠組みを飛び超え、軍手など使いあらゆる方法で、土を自在に使いこなす植田俊彦さん、現代の左官界をリードする職人さんたちのお話を伺った。
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左官は、大きく土ものと漆喰ものに分けられる。
土ものの基本材料は土+砂+ワラ(スサ)+糊(海草)と単純で、それらを調合し水でこねる。
粘土質の土で強度を出し、砂で調整、ワラで繋ぎ、糊で固めるという訳だ。
しかし、たかが土といっても白土、黄土、錆土、黒泥土、聚楽土とその種類は多く産地によっても色や粒子の大きさが違ってくる。繋ぎのワラも、米ワラや麻ワラ、短く刻まれたもの、あく抜きされたものと様々だ。

そして左官職人たちは、土を練ったり舐めたり「あまい、からい」などと言いながら独自のやり方で配合してゆく。素材の組み合わせ、職人の塗り方や手加減、塩梅で左官の世界は無限に広がってゆくのだ。
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早速、30cm角の板の上に土ものと漆喰ものを自分たちで塗ってみようということになった。小さな面積だけど、これがなかなか上手く平滑に塗れない。手の動きがそのまま仕上げとなってしまい、モタモタしていると土が固まってしまう。慎重派、大雑把などと、人の個性も現れてくる。
左官は、年月を重ねたからといって上手くなるものでは無いという。職人のセンスも関わってくるので体得するのは難しい世界なのだ。

手仕事による多様性や味わいを持つ左官仕事は、すばらしい日本の文化なのだ。しかし工業化の波により効率性や経済性が求められ、左官仕事は壁や床にモルタルを塗る作業に追いやられ、土壁は壁ではなくなりボードの上の表面仕上げとなってきた。建築から人の手による曖昧な部分、奥深い不思議な世界は消えてゆく。「ホンモノの仕事はどんどん減ってきている」と職人たちは嘆く。
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土を選び、スサを刻み、貝殻など混ぜ物を探し、自由に壁をつくることのできる左官の世界。手の跡や、月日を経た土壁の表情は私たちの五感に直接訴えかけてくる。そして土や漆喰は、自然素材そのものなのでテクスチャーの多様性はもとより、湿度をコントロールする調湿性、褪色しにくいという性質、蓄熱性など優れた性能を数多く持っている。

今回の見学では、左官職人さんたちの話を直に聞き、実際に土を触り、その無限の可能性を考えるきっかけとなったのでした。
(光風舎:吉原健一)
by iezukuri-school | 2011-10-23 21:18 | 報告 | Comments(0)


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